データの見えざる手

データの見えざる手というビッグデータの本を読んだので要点を書きます。

幸福や人間行動などを発達したITを使って考えてみる本。

時間は自由に使えるか

ユニバーサル分布

方眼紙のようにマス目で区切られた平面を考える。

そこにランダムに点をプロットする。

各マスにいくつ点が入っているか数えると、その数はある数を平均とした正規分布の形でばらつく。(横軸:マス内の点の数、縦軸:確率)

 

次に、ランダムにマスを2つ選び、一方から他方へ点を移動させる。

これを十分に多い回数繰り返す。

意外にも先ほどの分布は正規分布のままではなく、偏りが生じていく。

(マス目内の点の数がマイナスになることがない、という条件によって偏りが生じている?)

 

こうして得られるのがユニバーサル分布(U分布)である。

一部のマスに多くの点が集まったりする。分布は急な右下がりになる。

 

マス毎に特徴がある訳でないのに、やりとりをさせると偏りが生じてしまう。

原因がなくても、やりとりがあれば偏りが生じる。

(人間の経済活動でも、仮に個人間に実力差がなかったとしても富の偏りは生じたと考えられる。)

 

時間は自由に使えるか

人間の腕にセンサーをつけて、腕の動いた回数を1分ごとに計測した結果、ユニバーサル分布が現れた。

(1回の腕の動きは先ほどの”点”に、1分間という時間がマス目に相当)

この、

「人間は腕の動く回数を時間で区切るとユニバーサル分布が現れる」

という実験的な事実から分かることは、人間が無意識に時間毎の腕が動く回数を調節しているということ。

 

つまり、腕の動きが多くなる行動ばかりすることは出来ないし、逆も出来ない。

無理にやってもやる気や行動の質が下がると考えられる。

また、ユニバーサル分布とのずれは自由が束縛されている度合いとも言える。

 

ハピネスを測る

幸福の50%は遺伝的要因で決まる。

人間関係、貧富、健康、などの一見重要な要素を全て含めても10%程度である。

残り40%は日常の習慣や行動の選択による。

 

自分から積極的に行動したときに幸福感が得られる。

行動の結果が成功かどうかは関係がない。

 

幸福は加速度センサーで測れる。

質問紙やアンケートなどの古典的な手法と組み合わせることによって、幸せな人の体はよく動くことが分かった。

 

異なる人物の体の動きの量を比較しても生活が違うので意味がないが、同一人物においては幸福度が高いときに体がよく動く(活発度が高い)傾向がある。

 

コールセンターを調査した結果、実はメンバーのスキルレベルと受注率に相関がないことが分かった。

受注率との相関が意外にもみられたのは休憩所での会話の活発度。

つまり会話中の体の動きの活発さであった。

 

休憩所での会話の活発度を上げる施策を試したところ、受注率が上がった。

受注率が高かった結果、活発度が高いのではなく、活発度が高かった結果、受注率が高くなっていることが分かる。

また、身体運動は伝染する。

活発度が高い人に関わった人は活発度が高くなる。

つまり、身体運動が伝染すると同時に幸福も伝染する。

 

人間行動の方程式を求めて

人間行動の方程式を求めて

人が誰かに最後に会ってから一時間後に同じ人物に再び会う確率をPとすると、T時間後に同じ人物に再び会う確率はP÷Tとなる。

 

メールの返信に関しても同じ式が成り立つ。

つまり、メールの返信をしてから1時間後にまた返信をする確率をPとすると、T時間後にまた返信をする確率はP÷Tとなる。

 

人間はある行動(会わない、メールを返さない)をすると、その行動をやめる確率が下がっていく。

体の動きを伴う行動の継続時間も、長くなるほどやめなくなる。

行動内容によるが時間Tが20分から100分くらいまでは上記の式が成り立つ。

 

フロー状態

目の前の行動をやりがいがあるものであると感じ、自分の能力を発揮して楽しむ状態。

 

フロー状態になりやすい人は、やや速い体の動きが多い。

例えば歩行時に発生する3Hz程度の動きが一貫して起きやすく、またその発生頻度の変化が少ない。(ただし、フロー状態の最中に速く動く必要はない。)

 

立ったり歩いたりする頻度を増やすことで、フロー状態になりやすい状態を作ることができる。

 

動的システム理論

自然現象は原子とまわりの原子集団とが相互作用するシステムとして理解されてきた。

動的システム理論では自然現象を社会現象に、原子を人間に対応させ、両者を分離せずに複合システムとして捉える。

ホームセンターにおける実験

ホームセンターに赤外線による位置情報発信器を多数設置、従業員や客の位置情報を得た。

名札型センサによって各人の動き、会話情報、動きの活発度、誰と誰が話したかなどの情報も記録。またレジからは購買記録を取得した。

 

以上のデータを自ら学習するマシン(Hitachi Online Learning Machine for Elastic Society)を用いて分析した。

入力したデータを小さな要素にバラバラに分解。

さまざまな組み合わせで再度合成、業績向上に影響する可能性のある要素群を生成。

業績との相関をチェック。

 

顧客単価に最も影響する要素は店内のある位置に店員がいる時間であった。

10秒長くいるだけで顧客単価が145円も増えていることが分かった。

店員がそのポイントにいる時間を1.7倍にしたところ、売上が15%アップした。

 

その場所に店員が居ることで店内での客の流れが変わり、高い商品の棚の滞在時間が増えた。

しかしそのポイントは高い商品の棚からかなり離れているため、人間が予測するのは不可能だが、自ら学習するマシンなら出来る。

 

自ら学習するマシン

従来のコンピューターに出来るのは、演繹的な処理。

プログラムという普遍的な前提を提示し、個別のデータに対する結果を得る。

 

自ら学習するマシンには、ビッグデータの分析に必要な帰納的な能力がある。

大量のデータを入力することで、背後にある法則を得ることができる。

 

従来のアナリティクスでは人間が仮説を立ててそれを検証するが、膨大となったデータの膨大な組み合わせから人間が適切な組み合わせを見いだすのは不可能である。

仮説に頼らない分析が必要。

 

目的変数は「1日の売上」などのマクロなデータ。

ビッグデータは時刻ごと、人ごと、場所ごと、など一見関連の薄いミクロで膨大な組み合わせを持つデータ。

目的変数とデータは一対一で対応しない。

 

その間を埋めるのが跳躍学習(リープラーニング)と呼ばれる技術である。

 

自ら学習するマシンは教育、都市計画、環境問題などあらゆる分野に適応できる。

今後、与えられた問題に対して、解き方を考案する仕事(アルゴリズム開発など)は機械学習によって仕事を奪われる可能性が高い。

 

音声認識などのパターン認識の分野では、既に人によるアルゴリズムより機械学習が優秀となっている。

問題を作る側の仕事にシフトするべき。

 

上記の実験では、売上だけでなく従業員や顧客の活発度も上がっている。

つまり、ハピネスが向上している。

 

アダムスミスの「見えざる手」は個人が利益を求めることで富が社会に分配され、社会が豊かになるという考え方であった。

今後、ビッグデータを活用した利益追求によって社会は豊かになる。

「データの見えざる手」によって社会全体のハピネスが向上する。

 

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