こんにちは、ひつじ先輩です。
みなさんは、ロボアド投資を知っていますか?
最近は新聞やテレビでも紹介され、ウェブ広告でもよく見かけます。
ロボアド投資にお金をあずけると、ETF(≒投資信託)を買ってくれます。
それぞれのユーザにとってベストなバランスで分散投資してくれるのです。
素人がポートフォリオを考えるよりは、安定して勝てる。
買いつけも入金も自動化され、手間がかからない。
というのがメリットです。
しかし、このロボアド投資には大きなリスクがあります。
それは、為替リスクです。
今回は、ロボアド投資における為替リスク対策について考えます。
為替リスク
ほとんどのロボアド投資サービスでは、米国のETFを買います。
投資対象がなんであれ、ドル建て資産になります。
つまり、ETFの価値が上がっても、ドル円が大きく下がれば損をします。
ドル換算で勝っても、円換算では負けるかもしれないのです。
対策1:積み立て投資(ドルコスト平均法)
一度に大きく買わず、毎月一定額を買うようにする。
これだけです。
毎月入金する円が一定なので、
ドル円が高い月には、少なめにドルを買う。
ドル円が低い月には、多めにドルを買う。
ということになります。
その結果、平均すると安くドルを買うことができます。
「ドル円が上がったり下がったりする」
という仮定なら、有効な方法です。
しかし、ドル円が下がりつづけたら、これでも損をします。
対策2:FXでドル円を売る
より確実な対策として、FXがあります。
ロボアドでの資産額と同じだけ、FXでドル円を売るのです。
この、「売る」とは、FX用語でいう「Sする」という意味です。
マイナスのドルを持つと考えるとカンタンです。
ドル円を売っているときは、
ドル円レートが下がると利益。
ドル円レートが上がると損失。
となります。
ロボアド口座ではドルを買っているため、
ドル円レートが下がると損失。
ドル円レートが上がると利益。
となるため、ドルの数量を合わせておけば、為替の損益は0になります。
しかし、この方法にもいくつか欠点があります。
デメリット1:ドル円を売るために資金が必要になる
金額は、FX口座でレバレッジをどれだけかけるかによります。
たとえば、1万ドル売るための資金は下表になります。
(ドル円レートは114円とした)
デメリット2:マイナススワップが発生する
FXでは高金利の通貨を買うとスワップがもらえます。
これを狙う投資もあるのですが、今回はマイナスに働きます。
ドルには高金利ではないにしろ、金利がつきます。
この通貨を売るので、マイナスのスワップがつくのです。
たとえば、ドル円を1万ドル売っていたら、1日46円損します。
(業者:YJFX 2017年10月実績値より)
期間や売る量により、マイナススワップは以下のようになります。
年間何%の損になるかは、レバレッジによります。
先ほどの表に追加すると下表のようになります。
(いずれも損の額は、16790円で同じ。)
デメリット3:ドルコスト平均法の強みが消える
ここからは、ロボアド口座で積み立てをするケースのみ当てはまります。
(積み立てでなく、一度に買うケースでは当てはまりません。)
積み立てでは、ロボアドは毎月一定額の円で買えるドルを買います。
ドル円が高い月には、少なめにドルを買う。
ドル円が低い月には、多めにドルを買う。
つまり、
ドル円が高い月には、ロボアド残高はあまり増えない。
ドル円が低い月には、ロボアド残高が大きく増える。
ということです。
これにぴったり合うようにFXでドルを売ると、悲しいことになります。
ドル円が高い月には、ロボアド残高はあまり増えない。
このとき、FX口座でのドル円売りは、少しになる。
ドル円が低い月には、ロボアド残高が大きく増える。
このとき、FX口座でのドル円売りは多くなる。
つまり、FX口座では、
ドル円が低い月に多く売る。
ドル円が高い月に少し売る。
このように、ドルコスト平均法がマイナスに働いています。
ロボアド口座のドルと、FXでのドル売りは損益を打ち消しあいます。
そこでマイナスが発生することはありません。
しかし、ロボアド口座でドルコスト平均法を使って得た為替レートの優位が、
FXでのドル売りにドルコスト平均法を使うことで消えるのは惜しいです。
ドルコスト平均法はなぜ有利か
デメリットの対策にはこちらの記事の方法を使います。
その準備として、ドルコスト平均法について書きます。
ドルコスト平均法で買ったときの平均価格は調和平均。
一定株数を購入したときの平均価格は相加平均。(一般的な平均値)
相加平均≧調和平均なので、ドルコスト平均法は安く買える。
ということだけ押さえてもらえば、しばらく読みとばしてもOKです。
毎月一定額を購入する場合と、一定株数を購入する場合とを比較しますと、平均購入価格は次のようになります。
例えば月々の購入日の株価をx[n]とした時に、ドルコスト平均法による平均購入価格はn/∑(1/x[n])、
毎月1の資金でnヶ月間、株を買ったという仮定です。
平均購入価格=nヶ月で使った資金の合計/買った株数の合計
です。
nヶ月で使った資金の合計=1*n=n
また、
各月に買った株数=1/x[n]
買った株数の合計=Σ(1/x[n])
なので
ドルコスト平均法による平均購入価格はn/∑(1/x[n])
です。
一定株数を購入する場合の平均購入価格は∑x[n]/nとなります。
毎月1の数量でnヶ月間、株を買ったという仮定です。
平均購入価格=nヶ月で使った資金の合計/買った株数の合計
です。
各月に使った資金=x[n]
nヶ月で使った資金の合計=∑x[n]
また、
買った株数の合計=1*n=n
なので
一定株数を購入する場合の平均購入価格は∑x[n]/n
です。
したがって、
n/∑(1/x[n])<∑x[n]/n
であることが示せれば、ドルコスト平均法が有利であることが分かることになります。ここで、一定株数を購入する場合は相加平均、ドルコスト平均法の場合は調和平均を求めていることが分かります。
数学的には、相加平均≧調和平均であることが証明されており、(略)
n/∑(1/x[n])は、調和平均の式と同じかたち。
∑x[n]/nは、相加平均の式と同じかたち。
相加平均≧調和平均
は数学で証明されていることなので、
n/∑(1/x[n])<∑x[n]/n
は正であり、ドルコスト平均法は安く買えるのです。
デメリット対策:逆ドルコスト平均法
さて、今回はドル円をできるだけ高く売りたいわけです。
相加平均≧調和平均
なので、相加平均になるような売りかたをすればよいです。
「一定株数を購入したときの平均価格は相加平均」
となるのは先ほど示したとおりです。
そこで、株をドル円に置きかえます。
つまり、毎月一定数量のドル円を売ればよいのです。
これを先ほどの記事では、逆ドルコスト平均法と呼んでいます。
毎月一定でどれだけのドル円を売るか
毎月ロボアド口座で買うドルよりも、少なくなるように決めます。
こうすることで、
デメリット1:ドル円を売るために資金が必要になる
デメリット2:マイナススワップが発生する
は軽くなります。
デメリット3:ドルコスト平均法の強みが消える
はなくなります。
レートの変化で、ロボアドで買うドルが減り、
FXでのドル円売り量>ロボアド口座で買うドル量
となっては意味がありません。
マイナススワップも、多く支払うことになります。
レートが変化してもこうならないよう、余裕をとって決めます。
たとえば、月に10万円積み立てなら、ロボアドは877ドル買います。
(ドル円レートは114円として、10万/114=877ドル)
このとき、FXでドル円を毎月売る量を800ドルにしたとします。
このケースではレートが125円を超えなければ、
(10万/800=125円)
FXでのドル円売り量>ロボアド口座で買うドル量
これでもデメリットは残る
逆ドルコスト平均法でドル円を売っても、
デメリット1:ドル円を売るために資金が必要になる
デメリット2:マイナススワップが発生する
は軽くなるだけで、残ります。
また、
FXでのドル円売り量<ロボアド口座で買うドル量
を保つので、ドルが下がったとき、
FXで得られる利益<ロボアド口座での為替による損
となり、本来の目的の為替リスク対策も完全ではなくなります。
実は、ここはトレードオフになっています。
ドル円を売る量を増やせば、
ドル円を売るための必要資金は増え、
マイナススワップも増え、
為替リスクは抑えられます。
逆に、ドル円を売る量を減らせば、
ドル円を売るための必要資金は減り、
マイナススワップも減り、
為替リスクが増えます。
対策3:FXでドルストレート通貨を買う
ここからは、FXを知っている人向けの方法になります。
ニュージーランドドル/ドル(以下NZD/USD)を例に書きます。
NZD/USDは
買うとき、ニュージーランドドル(NZD)を買い、米ドル(USD)を売ります。
売るとき、ニュージーランドドル(NZD)を売り、米ドル(USD)を買います。
「/」が割り算だと考えれば分かりやすいのですが、
NZDが一定でUSDだけ下がったとき、NZD/USDレートは上がり、
NZDが一定でUSDだけ上がったとき、NZD/USDレートは下がります。
つまり、NZD/USDを持つことは、USDを売ることを含んでいます。
売るときには、まず利益はドル建てで得られます。
これに対してドル円レートをかけ、円にて受けとります。
ドル円レートが関係しますが、損益のみにかかるので影響は軽いです。
これならスワップを受けとれる
NZD/USDを買えば、スワップを受けとれます。
ドル円売りではマイナススワップを支払いますが、今度は逆です。
たとえば、NZD/USDを1万ドル買っていたら、1日14円もらえます。
期間や買う量により、スワップは以下のようになります。
為替リスクは分散される
ドル円を売れば、為替リスクを打ち消せます。
今回は、打ち消すことはできません。
たとえば、NZD/USDを1万NZD買うとします。
これはドル円を6900ドル売っていることを含みます。
(NZD/USDレートは0.69とした)
これで、ロボアドのドル資産リスクを6900ドル分打ち消せます。
しかし、NZDを持つことにより、その為替リスクを負うことになります。
つまり、ドルの為替リスクをドル、NZDの為替リスクへ分散できる。
というのが、この方法のメリットになります。
為替リスクの対策としては、ドル円を売るよりも弱い方法です。
どう買っていくか
ドルの為替リスクをどれだけNZDに分散するかによります。
たとえば、月にロボアドで5万円積み立て。
ドルの為替リスクを半分NZDに移したいとします。
5万円で増えるロボアドでのドル残高は438ドル。
(ドル円レートは114円として、5万/114=438ドル)
この半分、ドルを219ドル売るために買うべきNZD/USDは317NZDです。
(NZD/USDレートは0.69ドルとして、219/0.69=317NZD)
つまり、
ロボアド積み立て額/ドル円レート*リスク分散したい割合/(NZD/USDレート)
で買うべきNZD/USD量がわかります。
しかし、この式で毎月計算して買うとまた、以下のようなことが起こります。
ドル円が高い月には、ロボアド残高はあまり増えない。
FX口座でのNZD/USD買いも、少しになる。
ドル円が高い≒NZD/USDは安い
のでこれは損な買いかたになります。
ドル円が低い月には、ロボアド残高が大きく増える。
FX口座でのNZD/USD買いも、多くなる。
ドル円が安い≒NZD/USDは高い
のでこれも損な買いかたです。
そこで、ここでもドルコスト平均法を使います。
あらかじめ、月々いくらをNZD/USDに充てるか決めておきます。
ロボアド積み立て額/ドル円レート*リスク分散したい割合/(NZD/USDレート)
から計算される買うべきNZD/USD量。
この量を買うのに必要な日本円を計算しておき、毎月その額を積み立てます。
レートの変化に合わせて計算しなおしたりはしません。
まとめ
ロボアド投資のデメリットは、海外のETFを買うことによる為替リスク。
ドルの為替リスクへの対策として、FXを使うことをオススメする。
ドル円売りだと、マイナススワップが発生する。
NZD/USD買いでは、スワップがもらえるが為替リスク対策としては劣る。
いずれのケースでも、ドルコスト平均法をうまく使うこと。
コメント